首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

父譲りのニッコール(2)

今日の首里、春を通り越して初夏のような陽気。

気温は23度、湿度は52%。快適この上ない。もうTシャツと短パンで十分。朝からふとんカバーをはずして洗濯。東京株式市場が閉じる前には、もうパリっパリに乾いた。もちろんふとんはフッカフカ

素振りをしてもうっすらと汗がにじむ。この天気が続けば、今週末は久しぶりに飛び込みでラウンドしてみようかな。なんだかいいスコアが出そうな気がする。

そういえばもうプロ野球キャンプの季節だな。部屋の窓から首里の街を見下ろす。そこここのお家の庭に、ピンクの寒緋桜が咲いている。

たしか3年前、ブログを書き始めたころにもこの桜のことは書いたような気がする。調べてみると2011年2月10日の記事だった。僕はこう書き残していた。

それにしてもこの寒緋桜の紅色は不思議だ。これを「桜」といわれて、違和感を感じなくなるまでに、僕は果して何年かかるのだろう。

もう違和感はなくなった。年が明け、暖かい日が続き、そしてピンクの花がぽつりぽつりと咲き始める。

花を待ちわびる気持ちは同じだ。街のあちらこちらにピンクの彩りが加わる。ああ、今年もこの季節か。明るく穏やかな気持ちになる。

花に罪はない。沖縄の桜もとても素敵だ。3年たって、素直にそう思えるようになった。

そう、3年という時間はそれだけ重いのだ。3年たってもあの組織はダメだった。どんなに頑張っても、とうとう好きになれなかった。この島の銀行には、下劣な輩が多すぎた。
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父親から譲ってもらったニッコールレンズを取り出す。今回は200mmの望遠レンズ。Ai Nikkor 200mm F4。取り出してみると、傷ひとつなく、ピカピカに磨きこまれている。湿気の多い沖縄、カビが生えてしまったのではないかと思ったが、シリカゲルのおかげでこれも杞憂。

もちろんレンズは問題なくセットできた。さっそく首里の高台から、ピンクの桜を撮ってみる。

沖縄独特の赤瓦の古民家。周りをコンクリートの建物に囲まれた小さな庭。その中に寒緋桜が一本、見事な花をつけている。こんな光景があちらにも、こちらにも。

那覇新都心方面にレンズを向ける。ゆいレールがゆっくり静かに、急な傾斜を登ってきた。

まだ新宿区民だった頃、観光客として母親とともに沖縄を訪れた。まさにこの風景を眺めた。「あー、いいところやな。青い海を見下ろしながら暮らすのもええな。」そんな話をした記憶が残る。

今はその場所、首里の丘に住む。父親のレンズ越しにその時の風景を眺めている。偶然のような必然のような、何か不思議な感覚にとらわれる。