首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

品位を保てる収入

夕方のNHKニュース。

典子さま結婚 1億675万円支給

NHK NEWS Web 2014/9/16 17:37

  • 高円宮家の次女の典子さまが結婚して皇室を離れられる際に支給される一時金の額を審議する皇室経済会議が、宮内庁で開かれ、1億675万円が支給されることが決まりました。
  • 女性の皇族が結婚して皇室を離れる際には、品位を保つことを目的に、皇室経済法に基づいて一時金が支給されることになっています。
  • 会議では、来月5日に結婚される典子さまに、決められた算定方法での限度額となる1億675万円を支給することが宮内庁から提案され、全員が賛成して可決されました。

一般社会でいうところの「お餞別」だな。「品位を保つことを目的に」という下りがなかなか含蓄深い。品位を保つことを目的に支払われる額が1億円か。うーん、これって実際少なくないか。いまどき1億円では無理だろう?

興味を感じた時は原典にあたれ。「皇室経済法」(昭和22年1月16日法律第4号)を探して読んでみる。皇室の費用は、内廷費、宮廷費および皇族費の3種類。皇族費は、いわばポケットマネーなのだな。

第6条 皇族費は、皇族としての品位保持の資に充てるために、年額により毎年支出するもの及び皇族が初めて独立の生計を営む際に一時金額により支出するもの並びに皇族であつた者としての品位保持の資に充てるために、皇族が皇室典範 の定めるところによりその身分を離れる際に一時金額により支出するものとする。その年額又は一時金額は、別に法律で定める定額に基いて、これを算出する。

皇族としての品位を保持するのに必要な年収、そしてポケットマネー。この額は法律で定められているというのだから、調べてみたいではないか。かくして「品位を保持できる収入」の額は、働く日本人にとって一つのベンチマークとなりうる。

皇室経済法 第6条第3項

  • 独立の生計を営む親王に対しては、定額相当額の金額とする。(第1号)
  • 前号の親王の妃に対しては、定額の二分の一に相当する額の金額とする。但し、その夫を失つて独立の生計を営む親王妃に対しては、定額相当額の金額とする。この場合において、独立の生計を営むことの認定は、皇室経済会議の議を経ることを要する。(第2号)
  • 独立の生計を営む内親王に対しては、定額の二分の一に相当する額の金額とする。(第3号)
  • 独立の生計を営まない親王、その妃及び内親王に対しては、定額の十分の一に相当する額の金額とする。ただし、成年に達した者に対しては、定額の十分の三に相当する額の金額とする。(第4号)
  • 王、王妃及び女王に対しては、それぞれ前各号の親王親王妃及び内親王に準じて算出した額の十分の七に相当する額の金額とする。(第5号)


同 第6条第7項

  • 皇族がその身分を離れる際に支出する一時金額による皇族費は、左の各号に掲げる額を超えない範囲内において、皇室経済会議の議を経て定める金額とする。
    • 皇室典範第11条 、第12条*1及び第14条の規定により皇族の身分を離れる者については、独立の生計を営む皇族について算出する年額の十倍に相当する額(第2号)


今回、「決められた算定方法での限度額」1億675万円が女王である典子さまに支払われる。逆算でこの「定額」なる金額を求めてみる。いずれも「独立の生計を営む場合」の額だ。

  • 女王への支出年額は、1,068万円。(=1億675万円÷10)
  • 内親王への支出年額は、1,525万円。(=1,068万円÷0.7)
  • 親王への支出年額(=定額)は、3,051万円。(=1,525万円÷0.5)
  • 王への支出年額は2,136万円。(=3,051万円×0.7)


親王ならば3,051万円、王ならば2,136万円。日本人男性の目標がこれらにあたるわけだ。ちなみに、女性のそれは内親王1,525万円、女王1,068万円。

うーん、女性はともかく、男性のこの額は今やなかなか稼げないぞ。しかも皇族費の場合、所得税を課されない*2からこれが手取りベース。年収ベースではさらにハードルが高くなる。

もう僕は完全にギブアップ。果たして、これから収入によらない方法で、「品位を保持」していくことができるだろうか。

*1:皇室典範第12条「皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる。」

*2:所得税法第9条第12号。