首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

『大統領の執事の涙』

帰りにパレットで映画をみた。

「LEE DANIELS' THE BUTLER」 、邦題は“大統領の執事の涙”。最貧の黒人が執事としてホワイトハウスに入り、7人の大統領に仕えるというサクセスストーリーだ。

しかし、サクセスストーリーとしての痛快さはなかった。歴代大統領とのやりとりは、ドラマティックというよりはむしろかなりアッサリしている。

同時に、背景にある黒人差別や公民権運動についても深入りした内容ではなかった。バランスよくてわかりやすくて、教科書のおさらいという印象を受けた。黒人差別を取り上げた映画としては、強烈な印象を残すというものではない。凡庸だ、と評価されることもあるかもしれない。
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むしろ普遍的な「家族の物語」として、僕はこの作品を味わった。父と息子の和解のお話。

どん底から大統領執事へと駆け上り、その道のトッププロとして生きる父。高等教育を受けるという恵まれた環境で育ったが、使命感から解放運動にのめり込んでいく息子。「黒人差別」というものがダイナミックに変化していく時代の中で、二人の心はすれ違っていき、関係は疎遠になる。

世代ギャップをもつ父と息子。その二人がともに成長し、最後に和解する。目指すものが同じだったということを確認し、それぞれのこれまでの生き方を認め合う。
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たたき上げの父親が一生懸命に働き、「こんな思いをさせまい」と息子に対して精一杯の教育環境を与えた。息子はそんな父親の気持ちをよそに、自分が正義と信じる道をがむしゃらに進む。父は息子の気持ちがわからず、息子は父に反発する。

世の中にはこんな話がたくさんあるのではないか。自分と父の関係にもそんなところがあった。

ひとつの会社で、プロとして定年まで勤め上げた父。父は僕の働き方をなかなか理解できなかったのかもしれない。自分の思い通りに職場をステップアップしていった僕。学歴の面では何の苦労もなく職場を渡り歩けたのは、子供のころから最高の教育環境を与えてくれた父のおかげだった。それに気づくには、本当に気づくには、結構な時間がかかった。

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沖縄の銀行を辞めた時、父にも母にも相当の心配をかけた。しかし帰省して、ゆっくりとお互いに話してみて、分かってもらえたような気がしている。この歳になって、やっと分かり合えた気がする。

働くことの尊さ。正義と信じる道を進むことの重み。生き方は違うが、目指すものは同じだ。