首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

『エレニの帰郷』

週末に『エレニの帰郷』を見る。(英題:The Dust of Time, 原題:Η σκόνη του χρόνο)

突然先月から映画を見始めた僕なので、アンゲロプロスという監督のお名前は寡聞にして存じ上げません。「20世紀最高の映像監督」といわれてもピンときません。教養なくて本当にすみません。

何の予備知識もなく見始めた。全く筋がつかめない。何のことやら。何度か意識が遠くなりかけた。

しかし後半になって、突然流れに乗れたような感覚を得る。いや、これはもしかしたらすごい映画かもしれない。

僕も含め、人間というものは毎日を理詰めで生きているわけではない。意識は途切れ、知覚はよじれ、記憶はつながる。苦しい思いをした人、トラウマを抱えた人、そして年老いた人。実はみな心にこんな風景を映しながら、必死で生きているに違いない。

僕も含め、みな気が触れるかどうか、ギリギリのところで生きているのだ。邦題よりも、英語でのタイトル”The Dust of Time (時間の塵)”のほうがしっくりくる。