首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

有朋自遠方来

  • 朋(とも)あり遠方より来る、亦楽しからずや。

仙台から親友が訪ねてきてくれた。

「退職した。今は何もせずゆっくりと過ごしている」と伝えたのは先月のこと。忙しいにもかかわらず、スケジュールを割いて沖縄に飛んできてくれた。わざわざ僕に会うために。

雨の予報が外れ、絶好のドライブ日和に。北に向けてクルマを走らせる。普天間を過ぎたあたりで「まあ話を聞こうやないか、ということや」と切り出された。

クルマの流れはスムースだった。ハンドルを握りながら、落ち着いて話を聞いてもらうことができた。カッコなんかつける必要もない。アタマの中がキレイに棚卸しされていく。お互いの決断を節目節目で確認しあってきたからこそ、なのか。

金武のゲート前で、僕はこんなことを言っていた。「今回の決断、100%正しかったとは決して言い切れない。感覚的には4割は、あー失敗したな、という後悔。でも6割はこれで良かったと確かに感じている自分がいる。でも、本当の分かれ道というのは、こういう感じ、こういう比率で決まっていくんとちゃうかな。」

彼はこの辺りで、「もう全部わかった」といった。「実は会ってしばらくして、ああこの表情なら安心やな、と確信したけど」ともいった。そして「辞めたと聞いて、ともかく話をしなければと来てみたが、何の心配もいらんな」と。

古宇利島で海を眺めた。水は澄んでいて、舐めると本物の海の味がした。喜瀬でゆっくりお茶を飲み、お気に入りの店でテビチを食べた。首里に戻り、つまらない居酒屋でオリオンと泡盛を飲んだ。最後は自宅のリビングで。彼はギターの弦を弾き、僕はピアノの鍵盤を叩き、いつもの曲を歌った。

終電が出るから、今宵はここまでだな。ゆいレールの改札口まで送った。「結局、12時間以上も話したな」というと「学生の時と全く変わらんな、昔は夕方から夜明けまでやったけどな」と彼。今度は奴も交えて会おう。握手をして別れた。

お前がピンチの時は、僕が力になるからな。だから体調には気をつけて。それだけはほんまに頼むで。