首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

二号線で先輩と

昨夜、近所にお住まいの先輩からお誘いを受けた。

「魚の美味い居酒屋につれていってやろうか?」と携帯メールが。わあい、お魚大好きです。有難うございますっ!

交差点で待ち合わせ。タクシーを拾ってお店へ。

タクシーのなかで、しばしテビチ談義。昔はもっともっとテビチ屋さんがあったんだと。後継者がいなくて、みなその代で終わり。「もう、みなテビチなんか食べないからねぇ。」とおっしゃる。いやいや、食べますよ。僕が言うのもなんだが、ソウルフードでしょう、これは。

お店は首里の坂を海に向って下って行った先にある。タクシーは環状二号線をしばらく走る。お店の名前は、「二号線」。そのままやーん。

この道は普段からよく通る。何度も店の前は通っている。でも気付かなかったな。そば屋とか、テビチ屋はなんとなく嗅覚が働くのだけど。居酒屋は全く自分の意志ではいかないし。しかも沖縄には居酒屋は星の数ほどあるから。

間口は狭いが、奥はとても広かった。カウンターがあって、テーブル席があって、奥には座敷席がずらりと並ぶ。どの席にも「予約8名・○○さん・7:00」などと書かれたメモが置かれている。

もうどの席にも泡盛の瓶がドンと鎮座している。そうとう繁盛しているようだ。「今日はモアイがいっぱい入っていてねぇ」と、おかみさんがニコニコしながらおっしゃった。

カウンターの一角、それはそれは新鮮そうな魚が並ぶ。もう極彩色の魚にも驚きはしない。魚の上に、名前と値段が書かれた札が置かれている。

お勧めだから食べてほしい、といわれたのが「バター焼き」だった。メールで誘ってくださったときから、「とにかくバター焼き」とおっしゃっていたので、楽しみにしていた。

並んでいる魚から「ビタロー・900円」と書かれたのを指さし、「これね。バター焼きで。」とおかみさんに告げた。この注文の仕方、ワクワクすることこの上ない。どれが新鮮だろう?大きさは?バター焼きにはどれがいいかな?

広尾のアクアパッツァを思い出す。「東京の高級イタリアンのお店みたいですねえ。」というと、「沖縄にはレストランはないので、ぜんぶその機能は居酒屋に集約されるんだよ。」と先輩。わはは。それは面白い説だな。

出てきたバター焼きはみごとな姿だった。表面はカリっカリ。まるで空揚げのように、ひれの部分もパリパリとかじれるぐらいだ。こんなの見たことがない。生ガーリックの薄切りも添えられている。

味も絶品。食感といい、味付けといい、これまで食べたことがないものだ。本当に、これなら東京の高級レストランでも出せるよ。給仕がテーブルに運べば歓声があがること間違いない。それを取り分けてサーブする。この味なら4,000円は十分取れる。

二人で黙々と身をこそげて食べる。表面のカリカリもうまいが、裏っ側にまた別の世界があった。バターが染み込んで、しっとりした身。これもうまいなー。僕は裏っ側が好きかも。いや、一口目の表の皮もよかったなぁ。はい、恐れ入りました。

最後は「さかな汁」。アラがたっぷり。頭の部分が5つは入っていただろうか。身を食べるだけで、ゆうに30分はかかりそうだ。

冷めないうちに、汁をすする。おお、これは旨味の塊だ。どんぶりの容積は、新鮮な魚の身で7割ほど占めているのだから、当然といえば当然。フーチバーの香りがまた食欲をそそる。

ところでこのさかな汁。値段はたったの500円というのだから、これはもう驚愕するしかない。身をきちんと食べればお腹いっぱいになる。ご飯と刺身をつければ、もう立派な魚定食。2,000円でも納得のクオリティだ。

先輩、おいしかったです。美味しいお店の相次ぐ閉店にガックリしていたけど、まだまだいいところはありますね。

いい日になりました。次回こそは、僕にごちそうさせてください。