首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』

『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』(原題: sacro gra)を観る。

首都ローマを取り囲む高速道路、Grande Raccordo Anulare。略称 GRA。

映像を見る限り、ずいぶんと郊外を走る道だと感じる。東京・首都圏でいえば、外環自動車道よりもさらに外側、国道16号線に近いイメージだ。

ローマという美しい響き。しかし、われわれが見知る華やかな都の姿は一瞬たりとも画面には現れない。延々と映し出されるのは、洗練とは対極の生活だ。そして、延々と聞こえるのは、高速を飛ばす自動車の単調な通過音。

車上で暮らす中年女、ウナギ漁を営む老夫婦、古びたマンションで暮らす親子、没落した金持ち、色を売り買いする男女。ああ、掃いて捨てるほど大量の、平平凡凡な人生たち。

僕が重なったのは、一人の救急救命士の人生だ。楽しいとはいえない仕事。その上に、痴呆の母を背負って生きている。なんという澄み切った優しい心立ち。国道16号線の道端にも、こんなに小さくも美しい、聖なる花が咲いているのだろうか。

エンディングの曲がいい。低く静かに抑えられた本編の雰囲気から一転、高らかに歌い上げられるカンツォーネ

歌の意味はわからない。ともかく、ああ素晴らしき人生、と。