首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

『舞妓はレディ』

皆既月食は曇りでオジャン。じゃあ映画でも見て帰りますか。

昨日の映画はとにかく酷かった。今日はどうだろう。で、『舞妓はレディ』。

正気かね、この監督。こんな人を小馬鹿にした映画でカネを取ろうとは。

例のテーマソングが流れた時、不覚にも寒イボが立った。My Fair Ladyをもじってるんですよね。これを面白いと思ってるんですよね。本気でそう思って制作してるんですよね。うーん、ゾッとするわ。

真面目に言うのもなんだが、まずストーリーが死んでいる。なにやら金欲が透けて明るさがない。それを爽やかなミュージカルに仕立てようとするのなら、しかもかのMy Fair Ladyを意識するというのなら、もうちょっとマトモな楽曲を使うべきだろう。おまけにどの歌い手も下手、アレンジも雑。いやーつらいわ、これは。

この監督さん、京都に何か恨みでもあるのだろうか。リスペクトが足りないどころか、この街の文化をあまりに軽んじている。生粋の京都人は怒っていると思うわ。美しくも深い花街のしきたりを題材にすれば、それだけで十分感動は呼べる。だから余計に腹が立つ。

キャストもほとんどが大外れ。繰り出される珍妙な京言葉には虫唾が走った。救いは岸部一徳田畑智子の存在。この二人プラス富司純子の話す言葉だけはガチ。特に岸部の旦那言葉。これはいわく言い難いほどのリアリティ。

主人公・小春は悪くない。後半の京言葉は滑らかで自然だったし、舞は率直に美しいと思えた。このレベルに達するためには、相当のトレーニングと努力が必要だったと思う。ただしミュージカルについては残念賞。歌声は個性がなく心動かされなかったし、踊りはなんだか中途半端だった。

ただひとつ、素晴らしかったのが「画角」だ。固定したカメラで真正面から映したとき、キチリと四方が決まり、ビシッと対象が収まる。観ていてとても気持ちいい。これって当たり前のようで、実はすごい技術なのだな。今夜それを実感。

で、結論。音声なしで見るべきだった。音楽もセリフもなしで。その状態で画面を眺めていたら、もうすこし幸せな2時間が過ごせただろう。