首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

我が国の金融資本市場

昨日の日記の続き。昨日(14日)のうちに、スタンダード・アンド・プアーズ社(S&P)もソブリン格付けに関する見解を公表していた。ということで、主要格付機関のうち、R&I社だけがコメントを出さなかったことになる。残念なことだ。OBとして情けなく思う。

さて、R&Iのホームページを見ていて、“?”と感じるプレスリリースを発見した。生命保険会社の信用力評価についてのコメントである。「金融・資本市場の混乱の影響で生保のリスク耐久力に低下懸念広がる-ストレス下でのリスク管理の実効性にも注目-」と題しているが、この表現は明らかにおかしい。なぜなら少なくともこの日まで、金融・資本市場は全く混乱していないからである。

確かにこの日、日経平均は一時1300円を超える下げとなった。下落率でみて、史上3番目の大暴落である。これは金融・資本市場の混乱なのだろうか。僕はこれは混乱ではないと理解している。日経平均先物で2度サーキットブレーカーが発動したものの、前場、後場を通じて、常に値が立ち、取引が行われていた。むしろ混乱とは対極で、金融・資本市場の機能が秩序正しく、見事に発揮されたと考える。

昨日の日記に、市場の動きは「教科書通りのflight to quality」だったと記した。本日もまさにそのような動きだった。株式を持っていた(Long positionの)投資家が、地震や原発事故を踏まえて「当初の見通しが変わった」「このリスクは取れない」と判断してポジションを落とそうとした。一方、「この価格でならリスクは取れる」と判断した投資家が存在した。ここにリスクの交換が成立し、持ちたくないと考えていた投資家はリスクを外すことができたのである。

前場終了後は大阪証券取引所やシンガポール取引所で日経平均先物の取引が行われていた。シンガポールでは一時7000円台まで下落した。後場がはじまって裁定が働き、先物も9000円近くまで戻した。しかし、これも決して“混乱”ではない。非常時であるにもかかわらず、株式市場を開いて取引を行った政府の判断は正しい。しかも開いた市場で粛々と取引が成立したという事実は、日本の金融・資本市場の水準の高さを証明するものであると思う。驚嘆に値する。

“混乱”という表現、それは「市場が開かれなかった」「取引途中で場を閉じた」「停電等でシステムダウンし、取引ができなかった」といった場合にのみ用いるべきだ。格付機関は金融・資本市場のインフラの一部を担っている。その格付機関が本日の市場を「混乱」と評するのはあまりにも見識不足である。元同僚の猛省を望むところだ。