首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

ホールインワン

ホールインワン達成。
カヌチャリゾートの2番ホール(146ヤード)で。

オフィスで机を向かい合わせて座っている同僚との2サム。
朝5時に起きて、暗いうちからクルマを70分走らせて、待ち合わせギリギリ到着。
この日はインスタート。前の組は、翌週開催されるジュニア公式戦の練習と思しき姉弟とキャディ役のお母さん。アスリートっぽい緊張感の中、リズムよくラウンドしていた。前半は序盤のパットミスが響いて43。

アウトに入り、姉弟組の前にモタモタしたおじさんパーティが割り込み。急にプレイのペースが落ちた。1番ホールはパーで切り抜ける。

迎えた2番は池越え146ヤードの名物ホール。姉と弟がティショットを打ち終えたころ、うちの組はティグラウンドに到着した。時間があったので、手にした8番アイアンをじっくりと、念入りに素振り。今思えば、これがよかったのかもしれない。

グリーンが空いた。ティグラウンドやや右側にティを刺す。池越し、真正面に赤いフラッグが立っている。左手をストロンググリップで握り、続いて右手を真横から合わせるように重ねる。

腰がスルッと回り、手にはシャフトの弾き感が残った。当たりは良かった。ボールはほんのわずかに左サイドにでたあと、すぐにゆるやかなフェード軌道で右に戻ってきた。「よし、池は越えたな。ラフで止まるな!」コンタクトレンズの調子が悪くて、この先のボールの行方は自分では終えていない。

同伴の同僚が実況してくれた。「右に戻ってきた・・・・よし、ナイスオーン。・・・・転がっている、転がっている・・・・・消えた。」 ん?消えた?

「消えた。・・・入ったよ。入った。ホールインワン!うぉー、うぉー、ホールインワン!」同僚が激しく興奮してくれている。その横で僕は結構落ち着いていた。「えー、ホンマかいな。ホンマに入ったの見た?」実際に入ったところを目撃していなかったからかもしれない。同僚は「見ましたよ。ホントに入りました。グリーンの上にボールないでしょ?」

カートに乗り、グリーン横で停める。確かに僕の使っているオレンジボールはグリーン上には見当たらない。このあたりで、何だかとんでもないことが起こったのだという実感が徐々にわき始めた。

ボールを拾うためにだけグリーンに向かう。パターを持たず、手ぶらでグリーンに上がるのは奇妙な感覚だ。旗がささったホールをそおっと覗きこむ。おお、ボールが、オレンジのボールが、本当に入っている。

こんな時、何をすべきなのか全く考えていなかった。自分では平静のつもりだったが、わずかに足が震えていたのは確かだ。とりあえず、何枚か思いつくまま記念写真と称してシャッターを切っておいた。スコアカードに「1」と書き込んだ。僕はパーを取ったホールのスコアを○で囲み、バーディを取った場合は◎で囲んでいる。人生初のイーグルでもあるのでどうしようか迷ったが、なんとなく三重丸でかこっておいた。今から思えば、☆で囲めば良かったかもしれない。

同僚によれば、ホールインワンをやらかした後は、浮足立つのかスコアが崩れるものらしい。案の定、僕も次のホールは深いラフにぶち込み、トリプルボギーであっという間にオーバーパーとなってしまった。しかしその後は淡々としたアスリートプレイに戻り、結果アウトは41。トータル84の自己ベストタイでホールアウトした。

「ふかひれでもなんでも、好きな物食っていいぞぉ」同僚には中華レストランでランチをご馳走した。レストランのウエイターに「さっきホールインワンしたんですよー。ビールかなんか、いいもの付きますか?」と聞いたら、「あいにく当倶楽部ではそのような取り扱いはございませんで。」と丁重に拒否されてしまった。

そのあとフロントで「さっきホールインワンしたんですよー。記念植樹とかした方がいいんですかね?」と聞いたら、「あいにく当倶楽部ではそのような取り扱いは停止しておりまして。」とこちらも丁重に拒否されてしまった。