台風谷間のグレン・グールド
フィートゥが先島へ去ったと思ったら、明日また強い台風24号、アジア名ダナス(DANAS)がやってくるとか。まるで兄を追っかけてくる弟のようだ。おにぃちゃーん!
今日の首里、晴れ間こそでているものの、相変わらずベランダでは素振りができないほど風は強い。今日は文化部の生活と心を決めた。退職後、アマゾンで購入したままになっていたCDボックスを開封する。
最初に取り出したのはグレン・グールドのバッハ全集。没後発売されたものも含め、グールドの残したバッハ演奏のすべてがレーベルを越えてまとめられている。実にCD38枚+DVD6枚の計44枚。ハードカバーの分厚い解説本付きで、これが新品で12,600円。ありえない安さだ。アマゾンだからもちろん送料込み。
グールドを最初に購入したのは高校の時。1981年録音のゴールドベルグ変奏曲。こだわりの高音質盤、3,500円のLPレコードを擦り切れるほど聴いた。大学時代には4万円もする6枚組レーザーディスクを清水の舞台から飛び降りる気分で買ったりもした。そのLDの内容もすべて含まれている今回のBOX。価格破壊もここに極まれり、ですな。今の学生さんはほんとに幸せだ。まったくうらやましい限りです。
これまで聴いたことのなかった盤を、全集の中から適当に抜き出してCDトレイに乗っけてみる。…いやいやいや、これはこれは宝の山ですぞ。
例えば、ヴァイオリンとチェンバロのための6つのソナタBWV1014~1019。ハイメ・ラレードとの演奏。今まで知らなかったけれど、これはすばらしいじゃないですか。1976年録音とある。なるほど、脂の乗り切った時期の演奏か。しかし、脂が乗るといっても、決してねっとりした、癖がある演奏じゃない。かといって、枯れているというわけでもない。力みがなくて、軽やかというイメージ。もちろんグールドなので伴奏に徹するということにはならないが、アンサンブルとして見事にかみ合っている。ちょっと例えがアレだが、20年ぐらいかけて熟成したレンガ色した赤ブルゴーニュと鴨のローストを合わせたような。すごいワインなので口にすると自然と顔がほころんでくる。もちろん料理ともばっちりあっている。ちょっとそういう感じの感動があった。
短い人生ではあるけれど、限られた時間の中で、まだまだ聴かなきゃならないものがたくさんありますね。生きがいがまた一つ増えました。