首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

ゆし豆腐そば

(略)今日は豊見城は名嘉地交差点にある海洋食堂へ。ここは朝の9時開店。前髪にピンクのカーラーを巻いたオバハンが開店準備の真っただ中。ゆし豆腐そばを注文して席に着く。

新聞を読んでいると、「ちょっと、これこれ。」とオバハン。「入口のドアの上のところ、自動ドアのスイッチがあるから入れてぇちょ。」手が届かないらしい。席を立って、ドア枠の上についている赤いスイッチをオンにした。「奥のテレビの上。」とオバハン。「その上ににエアコンのスイッチ。そう、それそれ。おしてえちょ。」靴を脱いで、畳間に上がり、壁についているエアコンのスイッチをオンにした。

靴を履こうとすると、「そこの窓全部。」とオバハン。「はい、全部しめてえちょ。」了解。この窓全部しめればよいわけですか。はい、とりあえずこれで開店準備は完了ですな。

新聞の続きを読み始める。厨房にもうひとりのオバハンが到着。ピンクカーラーのオバハンと挨拶を交わしている。「注文は聞いてるん?」「はい、ソーキそばって」おいおい、ちゃうちゃう。ゆし豆腐そばやろっ!いやぁ、このお店おもろいわ。関西人も負けるわ。

そばが運ばれてきた。ゆし豆腐とは、本土でいう「おぼろ豆腐」のこと。にがりを入れて固まりはじめた、型に入れる前のふわふわした豆腐である。当地ではメジャーな食べ物で、勤めていた銀行の社員食堂では、毎週月曜日はこのゆし豆腐と決まっていた。食欲のないとき、まあ二日酔いの日なんかが典型的だが、これを注文する沖縄のおっさんはたくさんいる。

で、こちら海洋食堂、もともとはお豆腐屋さんなんだとか。同じ敷地で食堂を始めた。もちろん今も豆腐は手作りの出来たて。ほかのメニューもあるが、イートインなら当然ゆし豆腐でしょう。

おお、これは美味いわ。たっぷりの豆腐の下には半熟卵が忍ばせてあった。厚く切った三枚肉も3切れ。味はちょっと濃い目。塩味を利かせているのは、南部の漁師街の食堂の共通点かもしれない。こーれーぐーすを加えるとまた絶品度が上がる。ぺろりと平らげた。これなら700円も納得だ。ごちそうさまでした。