カーリング五輪出場
カーリングは勝負の一戦。ノルウェーとのプレーオフ最終戦。
勝負は第8エンドだった。1点リードのノルウェー。第2投がハウスに届かないミスとなり、さらに第3投もハウスをスルーするミス。第5投、ノルウェーは1つも出せず、さらに第6投も弱く、日本のガードを逆に固めてしまう。
一方、日本はここまでほぼパーフェクト。ハウスには日本のストーンだけが6つ入っている。大量得点の予感が漂う。ここからスキップ勝負。しかし第7投、小笠原のショットはハウスをスルーさせてしまうミス。落ち着いて!
最終第8投、ノルウェーのショットはハウスに届かない。ミスがミスを呼ぶ恐ろしい展開。日本はノルウェーのNo.3を出すだけで5点、出してステイさせれば6点のビッグエンドになる。大チャンス到来。
チームメイトの「出せばいいから(出すだけでいいから)」という声に「OK!」と応じた小笠原。これが勝負の一投。アドレスに入ると表情がグッと引き締まった。
体重を十分に乗せてストーンを手放す。「ヤップ」一回目。「ヤァップ!」二回目は大声。「ヤアァァァップッ!!」三回目は絶叫。よっしゃ、完全にラインに乗ったで!
勢いのあるストーンは、ノルウェーのNo.3を正面から弾け飛ばし、ピタリとその場にとどまった。なんと6点のビッグエンド。間近でテイクアウトを見守った苫米地が笑顔で手を挙げた。小笠原は2回ガッツポーズ。小野寺が駆け寄り、肩からぶつかって完璧なショットを祝福した。
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圧倒的優位な状況になった日本。第9エンドで1点しか取れなかったノルウェーは、この時点でギプアップ。悪夢の第8エンド、ミスを連発させた彼女たちはソチへの出場権を手にすることができなかった。落ち込み、沈む顔。天国と地獄は紙一重だった。
スポーツは見ても、やっても気持ちがいい。駆け引きはあるが、インチキはなしだ。この地で散々アンフェアな扱いを受けてきたからか、ついつい憧れにも似た気持ちで観戦してしまう自分がいる。日本もノルウェーもいい試合を有難う。
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試合後のインタビューで小笠原は答えた。
- (今大会の開催地である)ドイツのことを考えない日はなかった。実は苦しかった。一投一投、日本のカーリング界を背負う気持ちだった。自分自身を追い込んでいたので、ほめてあげないと。
- 今大会で勝つことしか考えていなかったから、いつ五輪が始まるかも知らないが、納得いく試合をしたい。子どもを誰に預けるか考えないと。
あんたはホンマにすごいわ。恐れ入りました。