首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

PTSD

ここ数日、珍しく眠りが浅い。夜中に目覚め、そのまま朝を迎えることも。

理由は思い当たる。先週、立て続けにあの奇怪な銀行の元同僚に会った。何も変わっていない。むしろ酷くなっている。どうなるんだろう。そんな話を聞かされた。

知ったこっちゃない。僕は沈む船からいち早く逃げだしたのだ。うん、僕の判断は正しかった。

そう思えばいい。理性的にはそう思える。しかし、なぜか全身の毛が逆立つ。歯を噛みしめる。血圧がグッと上がる。

半年経っても、きっとまだ傷は癒えてはいないのだ。嫉妬に狂う上司からの嫌がらせ。「殺すぞ」と脅しをかけられたこともショックだったのだろう。室内に漂う腐臭。愚劣な人間の打算。無能を隠すための薄笑い。あと半年遅ければ、間違いなく僕もあの役員と同じように病に倒れたはずだ。危なかった。

心的外傷後ストレス障害。Posttraumatic stress disorder。PTSDだな。僕が銀行で受けた行為は、モラルハラスメントガイドラインに照らしても十分にクロだ。しかし、訴訟沙汰にはするつもりはなかった。ただ僕は一刻も早くあの組織から身を遠ざけたかった。精神の安寧のためには、それが一番良かった。そして、それは正しい選択だった。

沖縄の銀行の元同僚に会っても、今後は話題にしないでもらおう。

もう何のかかわりもないのだから。