首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

Think different

小保方晴子博士の研究にはショックを受けた。

数日前のNHKニュースを見たとき、「これはただ事ではない」と直感した。これまでiPS細胞の番組は熱心に見ていたこともあり、細胞の初期化については素人なりの知識はあった。最高峰Nature誌に掲載された論文だ。それだけでも凄いことは分かる。

僕自身は、自然科学の研究とは何の関わりもないド素人だ。せっかくだから論文を読んでみようと思ったが、NatureのサイトからPDFをダウンロードするには3,000円かかると知ってそそくさと諦めた。そんな程度の関心だ。

そのド素人が、明らかにショックを受けている。

ショックを受けているようだ、という表現の方が正確だ。経済学ならともかく、何の関係もない生物細胞学のお話。報道では若くて美人という側面が強調されているようだが、僕はそれには全く関心がない。

それなのに、朝な夕なのふとした瞬間に頭をめぐる。こんな奇跡みたいなことがあるのだろうか、と。

外部からの刺激だけで細胞が万能性を獲得するという考えは、生物学の常識からは外れたもので、周囲からの理解もなかなか得られなかったといいます。


小保方さんは、若山さんと一緒に動物実験を進めデータをそろえてイギリスの権威ある科学雑誌「ネイチャー」に投稿しましたが「あなたは過去何百年にわたる細胞生物学の歴史を愚弄している」と厳しいコメントを受け取ったといいます。


しかし、諦めずに実験を続け、多くのデータをそろえて再びネイチャーに投稿し、今回ようやく、その研究成果が世界に認められました。


NHK NEWSweb 「常識覆す成果 STAP細胞」1/31/2014

激しい雨が降る今日の明け方、僕の中にある一つの記憶とつながった。

“Think different”というAppleのイメージ広告。初めて見た時激しい共感を覚えた、あのメッセージそのものじゃないか。

クレージーな人たちがいる
はみ出し者、反逆者、厄介者と呼ばれる人たち
四角い穴に 丸い杭を打ちこむように
物事をまるで違う目で見る人たち
彼らは規則を嫌う 彼らは現状を肯定しない


彼らの言葉に心をうたれる人がいる
反対する人も 賞賛する人も けなす人もいる
しかし 彼らを無視することは誰にもできない
なぜなら、彼らは物事を変えたからだ
彼らは人間を前進させた


彼らはクレージーと言われるが 私たちは天才だと思う
自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが
本当に世界を変えているのだから

いま見直しても、鳥肌が立つ。
このCMは1997年に発表された。当時CEOに復帰したスティーブ・ジョブズは、次のような“哲学”をキャンペーンに反映させて展開することを指示したらしい*1

大人になると、この世界とはこういうもので、自分の人生も、その中にある人生を生きることだ、と言い聞かされることになりがちだ。壁を叩くようなことはしすぎるな。良い家庭をもって、楽しみ、少しばかりの金を貯めよう。


そういうのは、とても制約された人生だ。たったひとつ、単純な事実に気づけば、人生は可能性がずっと開けたものとなる。それは、自分を取り囲んでいるすべてのもの、人生と呼んでいるものが、自分より賢いわけではない人々が作り出しているということだ。周りの状況は自分で変えられるし、自分が周りに影響を与えることもできるし、自分のものを自分で作ることも、他の人々にもそれを使ってもらうこともできるのだ。


人生だと思っていたことも、突いてみることができ、自分が何かを押し込むことで、反対側で何かが突き出たりするのだと悟り、人生は変えることができると理解すれば、自分で人生を造形していくことができる。それこそが、おそらく何よりも大切なことなのだ。それこそが、人生はそこにあり、自分はその中で生きるしかないという誤った考えを揺さぶって振り払い、人生を抱きしめ、変化させ、改善し、自分自身の痕跡を刻み込むということなのだ。


私はこれはとても大切なことだと思うし、どのようにそれを学んだかに関わらず、それを学んだ者は、このいろいろな意味で厄介なことがらを抱え込んだこの人生を変化させ、より良いものにしようと望むことになるのだと思っている。一度このことを学べば、それまでのままではいられないのだ。

wikipedia:Think different -コンセプト、哲学、背景-

今日は引用ばかりになってしまった。引用ルール違反。でも今日だけは、付け加える言葉が全く見つからない。

気づきと勇気を与えてくださった小保方博士に、心からの感謝を。Think different、CMのエンディングで閉じた瞼を開いた小さな女の子、あの女の子は貴女だったのですね。

*1:wikipedia:「Think different」より