首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

名も知らない花・その後

風の強く吹き付けるパルコニーにおいたプランター。そのプランターのすみっこで、知らない間に芽を出した雑草。

風に乗ってやってきたのか、はたまた、鳥の排せつ物に種が交じっていたのか。どうしてやってきたのか不思議だった。

育てているネギの邪魔にならない程度なら。引っこ抜いたりせず、気が向いた時にはジョウロで水もかけてやった。

年が明けたころ、小さな花をつけた。この「名も知らない花」は、「イヌホウヅキ」という立派な名を持つのだと知った。

その後、バジルのように柔らかかった茎は割りばしのように硬くなり、今では鉛筆のような太さになった。枝はみるみる広がっていき、次々とあの白く可憐な、小さな花をつけた。

花の咲いた後が少しずつふくらみ、青い山椒のような実をつけ始めた。これはどうなるのだろう、と興味津々で毎日眺め、声をかけていた。

最初の花が咲いたあたりの実。気づくと色が変化している。渋いというか、大人っぽいというか。ブラックベリーとか、ダークチェリーとか、それよりもずっと深い紫色。

このイヌホウヅキ、花言葉は「男への死の贈り物」だ。忘れもしない。ちょっとだけ不気味な雰囲気のこの実、西洋では毒薬に見立てたのかも知れないな。

そのうち、鳥がこの実をついばむ。そして、またどこかのバルコニーでこっそり芽を出し、白く可憐な花を咲かせるといい。