首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

『Red Obsession 』

『世界一美しいボルドーの秘密』(原題:Red Obsession)を観る。

パルメ、マルゴーにラトゥール、そしてペトリュス。なるほど、こういう人がオーナーなのだな。僕の一番のお気に入りである(ラ・ミッション)オー・ブリオン、それから先日開けたコスの若いオーナーのご尊顔も拝した。

前半は畑とブドウ、そして歴史について。オーナーや評論家の口から、愛情と敬意が込められた言葉が次々とあふれる。なんだか無性に飲みたくなってくる。もうかなり昔になるが、勉強と称してずいぶんワイン道楽をした。その時の記憶はしっかりと頭と口に残っている。今晩は何か一本開けようかな。

ところが後半にその印象は大きく変わる。中国が引っ掻きまわすボルドー市場。確かにボルドーの格付けものは分かりやすい。成金がこぞって手を出すのはよく理解できる。こんなに凄まじい状況になっているのか。

僕が背伸びして飲んでいたのは20年ほど前。その頃は一級シャトーでも2万円も出せば購入できた。1982年物でも5万円以下だった。

調べてみると、Latour 1982やMouton Rothschild 1982は今や30万円前後で取引されているというじゃないか。この価格ならあの頃はロマネコンティが買えたぞ。「帰って今すぐ飲みたい」と思っていたのに、「ひとりで飲むのはもったいない」という気持ちになった。

それにしても『世界一美しいボルドーの秘密』という邦題は誰がつけたのだろう。これはほとんど騙しだぞ。映画のニュアンス、製作者の意図が全く伝わらない。Red Obsessionという原題そのまま、あるいは赤い執着、赤い妄想といった直訳の方がよっぽどいい。

帰宅して日本シリーズ開幕戦を観戦。阪神が快勝したけれど、この一勝だけではまだまだ1985年のワインは開けられない。