徳大寺有恒氏、逝去
自動車評論家の徳大寺有恒氏が、2014年11月7日、急性硬膜下血腫のため死去した。享年74歳。
名高い『間違いだらけのクルマ選び』。初めて世に出たのは1976年という。
僕はまだ小学生。もちろんクルマは大好きだ。父は居間でこの本を熱心に読んでいた。
その頃の我が家の愛車はマツダ・ファミリア。この本では「古くさいだけだ」と評されていた。おさな心はちょっと傷ついた。
父はいろいろ悩んだ末、この本で日本車としては最も高い評価を得ていた「いすゞ・ジェミニ」を選定・購入した。ドイツ・オペルと共同開発されたこのモデルはいかにもハイカラで、茶色のメタリックペイントがとても素敵だった。ワックスがけが大好きになったきっかけもこのクルマだ。
父と交わした会話はよく覚えている。当時の父が一番欲しかったのはアウディ80。次に初代フォルクスワーゲン・ゴルフ。ともにこの本で絶賛されていたクルマだ。アウディに乗ってみたいな、ゴルフはいいクルマだな。僕の意識の下にそれが埋め込まれたのはこの頃なのだと思う。それほど父との会話が楽しかったのだと思う。
きっかけを与えてくれた徳大寺氏には感謝だ。晩年は僕の愛車と同じゴルフ・カブリオレに乗られていたのだとか。心からご冥福をお祈りする。