首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

肥後と鹿銀

肥後銀行鹿児島銀行が統合するというニュース。

まずは肥後に相当の危機意識があったと思われる。もはやプライドズタズタ、どん詰まりの状況だったのだろう。もちろん原因はふくおかフィナンシャルグループ(FFG)。福岡県では全く勝ち目なし、お膝元でも昔は見下していた熊本銀行がFFG傘下に入り、今や強力なライバルに。画に描いたような群雄割拠だった地銀業界、その秩序がまず最初に崩れたのが熊本県だった。

鹿児島銀行に泣きついたのは驚きでもあり、必然でもあり。大名地銀として全国でも名高い両行。本当はお互いに一国一城の主でいたかったはず。しかし九州新幹線で一気に距離が近づいた福岡と熊本と鹿児島。経済圏、商圏が急拡大、福岡一極集中の流れが確立してしまった。ここで肥後と鹿児島がつぶし合えば、肥後はFFGに一気に押し込まれるだろうことは目に見えている。だから泣きついた。だから力関係は肥後が下。

しかしその鹿児島銀行の将来も暗い。鹿児島のみならず、田舎には企業の資金需要なんかない。いつのまにリッチになった個人(家計)を相手にするしか儲け口はない。しかし、田舎では個人は銀行を使わない。郵便局か信金信組、そして農協だ。地銀業界だけでシェアを測れば確かに大名地銀のプレゼンスは大きい。しかし郵便局や信金信組、農協を含めたベースでは大名地銀であっても寡占と呼べる状況ではないことは意外と知られていない。

だから、この2つの大名地銀がくっついたところで状況はかわらない。ともにプライドが高い割には、金融サービスのレベルが低い田舎っぺ。1足す1は、1でしかない。

金融持株会社を作ってそれに2つをぶら下げるという。このパターンの持ち株会社には辟易する。くっついて、ぶら下げて、いったい何をしようというのだろう。頭取はそれぞれの銀行に計二人残る。役員数だけ1足す1が2になる。現経営陣としては自分の地位が確保されるかが重要。ただそれだけのこと。

そもそも肥後と鹿銀は経営基盤ではバッティングしていない。経営基盤が重なっていないのだから、店舗スクラップの余地もほとんどなく、さしたる効率化も図れない。何より致命的なのは基幹系システム。これも別々なのだから、いったい何のための統合なのかさっぱり意味がわからない。とりあえずこのままではヤバそうなのでくっついてみました。ただそれだけのこと。

地方銀行というビジネスモデルは終わっているのだと思う。ちょうど今世紀初め、長期信用銀行というビジネスモデルの息の根が止まったように、地方銀行という業態はまもなく伝説の存在になるだろう。

沖縄はまだ20年は大丈夫。高度成長の波に乗れなかった後進県だから発展途上中。資本蓄積が本土並みに進むまで、地方銀行が存在しうるといえば存在しうる。それは言うまでもなく、ただ20年遅れているというだけの話。そんな大きな流れを読むことができず、沖縄銀行琉球銀行が近視眼的なシェア争いに血道を上げているのは、どうにも愚かとしか言いようがない。