首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

沖縄の預金金利はなぜ高い?

先日母親から電話で相談を受けた。「銀行の担当者さん、金利も低い時期だから定期預金を年金に切り替えませんか、ってしつこく言ってくるんやけど、どない思う?」僕は泣けるほど運用の才能がなく、このような相談を受けても何一つアドバイスしてやることができない。その時は、「心配やな、と思ったら止めとき。」とだけ答えた。

今日、ある出来事をきっかけに、沖縄の預金金利について正確に調べてみることにした。結論から言うと「母親に沖縄の地方銀行への預金を勧めるべきだった」との反省に至った。なお事情により、今日の日記は引用中心で書くことにする。

とりあえず、ということで「沖縄」と「金利」でgoogleってみた。すると、「沖縄の銀行は、なぜか定期預金の金利が超高い!」というページがかなり上位でヒットする。このホームページでは2010年12月の地方銀行まで含めた金利情報一覧が掲載されており、1年物定期預金のランキングは次のようになっている。*1

  1. 沖縄銀行インターネット美ら島支店- 0.55% -
  2. きらやか銀行ねっときらやかさくらんぼ支店 - 0.42% -
  3. 琉球銀行(インターネット)- 0.40% -
  4. 池田泉州銀行(インターネット)- 0.35% -
  5. 住信SBIネット銀行 - 0.35% -

沖縄県の地方銀行の定期預金金利が、驚くほど高金利を提示している。あらゆる銀行の中で、日本最高峰の定期預金金利となっている。どうしてこんな金利を提示しているのか、ご存知の方がいらっしゃれば、コメントを残して頂ければ幸いです。

本日現在、まだコメントを残している方はいらっしゃらない。どなたかご存知の方はいらっしゃいませんか?(苦笑)

このような“預金金利比較サイト”は上記に限らず、多数存在するようだ。それらのサイトからは、高金利をオファーする銀行にリンクが張られているケースが多い。そのサイト経由で預金契約に至った場合、幾許かの手数料がサイト運営者に入る形になっているのかもしれない。手数料かせぎだとしたら、この人のサイトのアイディアはなかなか面白い。…この人は全国のすべての地方銀行について「○×銀行よりも有利な定期金利」というページをつくり、それと比較して金利の高い銀行のサイトを訪問できるようにリンクを張っている。沖縄の地方銀行三行にもご丁寧に該当ページ「琉球よりも有利な定期金利」、「沖縄よりも有利な定期金利」と「海邦よりも有利な定期金利」がそれぞれ作成されている。

「このページでは、○×銀行よりも有利な条件の定期預金金利を提示している銀行を、一覧形式で比較できます」、「賃金の下がる時代だからこそ、少しでも有利な条件を提示している銀行を選ぶべきです。」、「管理人は地方在住ですが、地方銀行の定期預金はあまりに条件が悪いので、下記表の上位にランキングしている銀行に預け入れをしています。」

という書き出しで始まっているこのサイト、どの地方銀行にもこの定型文を用いている。しかし…、お気の毒に。沖縄の地方銀行はネット専業銀行よりも高い金利を提示しているのだ。“有利な条件を提示している銀行”が存在しないため、次のパラグラフでは“弁解(?)”を余儀なくされている。例えば沖縄銀行の場合はこんな感じだ。

とはいえ、沖縄銀行は全国の地方銀行の中では、トップクラスの金利です。全銀行の中でも5本の指に入る高金利です。ネット専業銀行と比較しても引けを取らない金利の設定に、少々驚きを通り越して怖い感じもします。

いまや、定期預金の金利の最新情報程度なら、Yahoo!ファイナンスのページからほぼすべての預金取扱金融機関のものが一覧で手に入る。怖ろしい時代になったものだ。リストにある272金融機関について集計した数字をみると、1年物期日指定定期預金の全国平均は0.04%。全国最低は0.03%となっている。。。。ん?沖縄の金利は一ケタ違う!!

沖縄の地元紙は昨年のちょうど今頃、「沖縄3行、預金獲得に熱、貯蓄志向追い風」(沖縄タイムス2010年2月19日)と題した記事を掲載している。

琉球、沖縄、沖縄海邦の県内3行が預金獲得にしのぎを削っている。市況の先行き不透明感から安全な預金に移す流れもあり、新たな預金商品も相次いで発売、獲得を目指している。各行とも順調な伸びを示し、琉銀の個人預金は1兆円の大台に乗った。一方、琉銀、沖銀による預金量のトップ争いも全体の伸びを引き上げる要因となっているとの見方もある。(略)


琉銀と沖縄のシェアトップ争いも全体を底上げしているとの指摘もある。09年9月の中間決算で、琉銀と沖銀の預金量差が約60億円とかつてないほど肉薄。沖銀が個人と同時に、法人預金で約700億円と調達を大幅に増やし差が縮まった。沖銀は「残高のベースを上げるため、調達を拡大した」と説明するが、金融関係者の間では「沖銀が総資金量でトップに出ようとしたのでは」との見方が根強い。

これについて、「定期預金関連ニュース」というサイトでは編集部が次のようなコメントをつけていた。

またまたローカルな話題ですが、沖縄で熾烈な(?)預金競争が行われているようです。地域トップの琉球銀行の預金残高に、2位の沖縄銀行が肉薄、一気に預金獲得競争に火がついたようですね。聞いているだけでも面白そうです。

まったく。沖縄県民としては、面白がられても困るのだが(苦笑)。しかし結果として…というか何というか、先の記事から9ヶ月後、次のような記事が同じ紙上に掲載される。「預金競争が収益圧迫、県内3行減益」(沖縄タイムス2010年11月13日)

県内地銀3行の2010年9月中間決算は、景気低迷が続くなか、本業収益が落ち込む厳しい決算となった。本業の収益力を示すコア業務純益は3行とも対前年同期で約1~3割減少した。市場金利の低下に伴い貸出金利息収入や有価証券利息配当金が減少する一方、預金競争の激化で支払い利息が増加。預金・貸出金の利ざや縮小が収益の減少につながった。


企業の投資意欲の減退などから融資量が伸び悩んだが、琉銀、沖銀を中心に預金獲得競争が激化。預金合計が6・5%と大幅に増えたことが今期の特徴だ。貸出金利息収入が減少するなかでの預金の拡大は、収益悪化にはたらく。海銀の嘉手納成達頭取は県内の預金利回りが「他県と比べて極めて高い」と強調。(略)

9か月前、「定期預金関連ニュース」編集部は先の「聞いているだけでも面白そうです。」というコメントのあと、次のように続けていた。

ただ一方で、単純なシェア争いをしても経営強化には何もつながらないことをGMや日航の破綻が示しています。ここまでくれば「誤差の範囲内」という気もしますしね。単なる体力の削りあいではなく、顧客の満足度が伴った意味のある競争を展開していってほしいものですね。

*1:データは、リンク先「国内金融機関を完全網羅!銀行☆定期預金ランキング」から2011年2月22日に転載したもの。