首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

もみの木

職場の忘年会。

宴会場には白いピアノが置かれていた。ヤマハのグランドピアノ、品番はC3。いい楽器があるじゃないか。僕の知らない女性が余興として何曲か演奏した。

位の上の方から順々に挨拶が続く。数人ずつ名前を呼ばれ、前でマイクを持つ。長い時間を経て、末席の僕まで順序が回ってきた。

呼び出されたのは4人。「わが社の奇人変人たち」と紹介された。ダンディな二世氏は「メリー・クリスマス」と甘い声でささやいた。カッコイイ。僕は「来年はあのピアノを弾かせてもらえるよう、しっかり練習します。」と述べた。

壇から降りると、「おい、業務命令らしいぞ。」と声をかけられた。え?いま弾くんですか?

「じゃ、何かクリスマスソングを演りましょうか。」簡単な短い曲がいい。浮かんだのは「もみの木」。好きなんですわ。コーネルのスクールソングでもある。この業界なら知っている人もいるかも、と。

最初の音に指を置いたら、想像よりも鍵盤は軽かった。ともかく、いい曲をいい楽器で気持ちよく弾けた。