首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

伯母との大晦日

伯母のところへ面会へ。

10月末に大きな手術をした伯母。あと何回も会えないだろう。そんな気持ちで伯母の暮らす老人ホームを訪ねた。

想像していたよりもずっと元気そうだ。会話もしっかりとできる。今度ピアノを弾こうな、そう約束したことも覚えていた、何となく。

あまり大げさな演奏会にはしたくない。ロビーにいた看護師さんに「今日は伯母と二人でピアノ弾きますね。」といった。体調を崩さないように、30分ほどで切り上げよう。

楽しそうに、手をたたいて伯母は歌った。歌集にあった曲は、ワンコーラスだけでなく3番まで大きな声で歌った。「そろそろ終わりにしよか?」というと、「気持ちええから、もう少し弾いてや。」と引き止めた。こんなことは初めてだった。

結局1時間ほど。「美味しいご飯と同じで、腹八分目がええで。」と切り上げて部屋に戻った。お茶を飲んで、ベッドに横になってもらった。

「いろいろあった人生やったわ。」伯母からこんな言葉を聞いたのも初めてだった。「働いてたときはしんどかったわ。」伯母はある大手銀行で定年まで勤め上げた。「銀行の仕事は、戦争やったわ。」

そうか。しんどかったなぁ。「頑張ったから、こうやって暖かいお部屋で過ごせて、みんなが訪ねてきてくれるねんなぁ」と言ったら、伯母は「そうやなぁ。」と笑った。