首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

現代の名工

ラ・ベットラの落合シェフが現代の名工に選定というニュース。

「現代の名工」に150人 イタリア料理の落合さんら

  • 厚生労働省は6日、工業技術や伝統工芸、料理など各分野で優れた技術や業績を持つ150人を本年度の「現代の名工」に選んだと発表した。
  • 選ばれたのは、東京・銀座などにイタリア料理店「ラ・ベットラ」を展開する調理師の落合務さん(66)ら。7日に東京都内で表彰式を開く。

名工選定を祝し、今日は昼から久々にパスタを作ってみた。サンマのラグーソース。ちょっとラ・ベットラを意識しつつ(笑)。ちょっと1人前にしては多過ぎた。。。

それはともかく、ラ・ベットラのパスタは美味しい。ホントに好きだった。オフィスのあった日本橋からお店(LA BETTOLA bisのほう)までは1駅と少し。歩くとだいたい20分。休日出勤した土曜日や、ちょっとまじめに働いた夜とか、時々ひとりで食べに行った。そういう使い方が似合うお店だ。

人気店だから予約が大変。それは確かに。僕も最初は何度も予約ができず、もう縁がないものと諦めていた。2003年の春までは。

2003年の春に落合シェフとちょっとしたご縁ができた。ロンドンから東京へのJL402便で隣り合わせたのがきっかけだ。

隣り合わせたといっても座席は一つ空席を挟んだお互い通路側。ビジネスクラスの真ん中の列、僕はD席で落合さんはG席だった。座っているのが落合さんというのは、席についてすぐに気が付いた。もちろん声なんてかけない。

当時のJAL欧州線、通のお楽しみは芋焼酎「森伊蔵」の機内販売。地上ではなかなか手に入らないこのお酒が定価で簡単に買えたのだ。1本3,000円ほどだったと思う。出張慣れた人はすぐにこれが売り切れることを知っている。僕も搭乗して最初のサービスが回ってくると、CAさんにお願いした。「あとで2本購入するのでよろしく」

機内販売が開始され、ほどなくCAさんが注文を予約した品を届けてくれた。2本を確認してプラスティックバックに入れる。よしよし、これで今回の出張は無事完結。

機内販売のカートが反対側のサイドに回ってきたとき、落合さんが呼び止めた。「あ、僕も森伊蔵を」。ところがCAさんいわく、「すみません、人気でもう売り切れてしまいました」。「あー、そうなの?それは残念、残念だなあ」と落合さん。

「よかったら、1本お持ち帰りになりますか?」ちょっと声をかけてみた。「僕はしょっちゅう乗りますし、これはどうせ余分のお土産なので」。

「え、いいの?それはうれしいなぁ」と落合さん。「イタリアンの落合シェフでいらっしゃいますよね? 味のわかる方に飲んでもらったほうが森伊蔵も喜ぶと思いますし」と僕。

「うちの店に飲みにいらっしゃいよ」と落合さん。「それは望外ですが、なにしろ予約の電話で毎回玉砕してますから」と僕。

「いいよ、僕に直接電話してよ。席はなんとかなるから」と落合さん。いやいや、何というもったいないお言葉。稀代の名シェフに直接お願いするなんて。「うわーい。有難うございます。絶対行きます、近々」と僕。

せっかくお近づきになれたので、席をひとつ移動していろいろお話を伺った。年に何回か、仲間と本場イタリアの味を確かめに行くのだそうだ。もちろんロンドンは経由しただけ。そりゃそうでしょう、あの街にはアルデンテという概念が存在しない。

その時のお仲間はリストランテ・ヒロ山田宏巳、アルポルト片岡護。日本を代表する豪華3トップじゃないですか。ななめ後ろに山田さんが座っていた。「片岡さんは前のほう、ファーストにいるよ。彼はカネ持ちだから」って、さすが大御所!すげー。

…2ショットの記念写真も撮ってもらって。楽しかったなぁ。あれからもう10年か。落合さんも今や国認定の「名工」ですよ。確かに、芸術家というよりも職人というイメージだな、落合さんは。いつもニコニコしていて、ちょっとジャムおじさんに似ているかも。

今回は本当におめでとうございます。よく沖縄にいらっしゃるとお聞きしますし、いつかまたお会いできることを楽しみにしています。