首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

日銀考査

久茂地で元同僚に出くわす。

まるで怨霊を見るかのような驚き。そんなにビックリしなくてもいいでしょう。「生きてたのか。」「生きてました。」

「仕事中なのか。どこで働いてる。」こちらはスーツにネクタイ着用。たしかにプー太郎の格好ではなかった。隠すこともないので、正直に勤務先を答えた。

「えっ、まさかよ」そんなにビックリしなくてもいいでしょう。銀行を見捨てた僕を雇ってくれる県内企業は限られている。ええ、おたくの歴代頭取と歴代専務が苛め抜いた、あの会社ですよ。

「この前、日銀考査があって、ちょうど打ち上げでおまえの話がでたんだよ」へー、考査がねぇ。そんな話僕に聞かせてもいいんですか。

「おまえの残した遺産は大きかったな、と。住宅ローン管理も、内部格付制度もまったくお咎めなし。むしろよく設計されていると褒められた」

何の驚きもない。あの信用リスク管理の仕組みには今でも自信がある。このレベルの地銀が導入するべき、最も適切なものだったと確信している。
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「あちらの分野はどうでしたか。」僕が問題視し、適切に対応しようとしたら、逆にそれを叱責されたあの分野のお話。

「ああ、そこはもちろんやられた。」しかし僕を叱責したあの無能どもは順調に出世。特にさんざん虐めてくださった彼に至っては、今や取締役なのだから。おたくの銀行はとんだラビリンスだな。

「そのうち、また戻ってきてくれるんだろ。助けてくれよ」頼りに思われているとすれば、それは光栄の至りだ。

ただ、冗談じゃない。在籍中はあらゆる分野で散々尻拭いだけさせて、陰では悪口といじめ。ナイチャーには給料も上げず、昇進もさせず、上げた成果は全部沖縄人で山分けしていた。そんな銀行に誰が戻りますかね。土下座されても戻らんわ。

「そうですね。ご縁があったら、また」そう笑って答え、その場を離れた。