首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

『シャトーブリアンからの手紙』

シャトーブリアンからの手紙』(原題:LA MER A L'AUBE)を観る。

ただただ純粋なギィ・モケ少年。一点の曇りもない。その対極に位置するのがヒトラー。姿も声も現さないゆえに底なしの悪を感じさせる。

この二極を結ぶ座標軸上に、さまざまな人間がプロットされていく。被害者としてのフランス人、加害者としてのドイツ人という単純な図式ではない。

シャトーブリアン副知事の存在が絶妙だった。誇り高い若きフランス人。ドイツの非情な命令にはできる限り抵抗を示す。「処刑者リストを作成するのはあなた達ドイツ軍でしょう。フランスのすることではない。」

しかし、彼の抵抗は「できる限り」のレベルだった。処刑者リストは遅滞なく作成され、リストを読み上げられた処刑者は小屋に集められた。処刑1時間前、呼び出された神父は副知事に問いかける。「あなたは何に従う?」続けて言い放った。「命令の奴隷になるな。

「公務員としての義務です。」と答えた副知事。生きるためには仕方がない。非情な命令であっても自分が潰されては元も子もない。これは生きていく上での方便。今も昔も、フランスでも日本でも沖縄でも。

この副知事は戦後、立派な勲章を受けたとエンドロールに記されていた。ふーん。生きた者勝ち?命令の奴隷になった者勝ち?

ギィ・モケは死んだ。けれども彼の手紙はこの世に残された。

言葉は残り、思いは永遠に続く。