首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

竹富で

エメラルドグリーンの海と真っ白な砂浜。自然に罪はなし。竹富島コンドイ浜は何も変わっていなかった。

フリースセーターとウインドブレーカーを着込むほど冷たい風。南国のイメージとは異なる控え目な雲が、対岸の西表島の上にぽつりぽつりと浮かんでいる。

遊泳できない季節だからだろうか、浜辺を歩く人はまばらだ。目立つのは関西弁をまくしたてる中高年の集団。オープンしたばかりの新石垣空港、そういえばLCCPeach)の機体が目立ってたな。季節限定激安運賃にひっぱられ、関西空港からオバハンたちが大挙してやってきたのだろう。

島の中心部はずいぶんと、それなりに観光地化していた。おしゃれなカフェ。洒落た雑貨を並べる店。中国語の看板も目立っていた。オンシーズンはどんな状態だったのだろう。もはや竹富島は世界的なリゾート観光地。素朴さを求める場所ではなくなってしまったのかもしれないな。

そんなことを思いながら、群青から紫に変わっていく赤瓦の家並みを、なごみの塔にのぼって眺める。日が落ちて小一時間もするともう真っ暗だ。暗くなった道をそば屋さんの灯りを目指して歩く。白砂の道はオレンジ色の街灯にぼんやりと照らされている。

おばさんが一人、ほうきで砂を掻いていた。「あれ、こんな時間にお掃除ですか?」竹富では朝早く、村の人が総出で道を掃いていた記憶があったので、僕は思わず声をかけた。

「ん?ええ。あの、ごみがね。落ちているごみが目立つでしょ。やっぱりね、拾っておかないとね。」背中を丸めた小さなおばさんは、手を止めて、ゆったりとした口調でそういった。ああ、この島は、この島の人は変わっていないかもしれない。

島の老舗のそば屋、「竹の子」さんで八重山そばを食べた。塩味がしっかりした、あじくーたーのそば。これも昔のままだった。ああ、美味しい。八重山の島こしょう、ぴゃーしーをたっぷりかけて食べると、冷えた身体もすっかり温まった。

宿にもどり、夜空を見上げた。堂々としたオリオン座が無数の星々の輝きのなかに3Dのように浮かび上がる。そして、那覇では決して見ることのできない、それはそれは見事な天の川が横たわっていた。