首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

アルゼンチン×オランダ

勝負の朝。夜明け前から緊張。

ぜったいオランダには負けたくない。勝ったら、今日はアルゼンチン・ブルーを着て出勤するで。

発表されたスタメンにビビる。並んだ名前だけ見ると、これってオランダのベストメンバーでしょうが。腹痛だといっていたファン・ペルシの仮病は織り込み済み。しかしデ・ヨングが出場とは。筋肉断絶だったんやろ?なんでもう出れるん?信じられん。

こちらはディ・マリアが負傷でベンチ。メッシとのコンビネーションがやっと良くなってきたと思ったのに。不安だ、不安だ。
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前半はお互いに様子をうかがう展開。アルゼンチンが先に押し込むのだが、オランダはすばやくボールを奪取。そしてシンプルに前線の二枚看板に送り込む。裏へ抜けるファン・ペルシロッベンへ向け、スナイデルから矢のように放たれるボール。

おお、こわいこわい。これはスペインを沈めたパターンそのものだ。ところがこの二枚看板、初戦のようには球がおさまらない。長ドスは空を切る。決定的な場面には至らない。

スコアレスで前半終了。引き揚げる両軍選手。心なしかアルゼンチンの選手の表情は暗い。一方のオランダ。知将ファン・ハールは納得の表情。「作戦通り。前半はこれでええわ」そんな風にニヤリと笑うロッベンが映った。背筋がぞっとする。
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後半。徐々にオランダが押し込み始める。アルゼンチンは防御する時間帯が増える。

絶対に決勝にコマを進めようと、あのアルゼンチンが全力で守りに入っている。「今日はとにかく必死に守り抜く」そんな意気込みが伝わってくる。ああ、これが準決勝。W杯の準決勝なのだ。

僕もつらい時間帯が続く。決定的チャンスは1度だけ。右サイドをえぐったペレスのクロスをイグアインがニアで合わせた後半30分。ここでは思わず声を上げた。

残り10分。お?アグエロアグエロが出るのか?もう負傷は大丈夫なのか?これは僕にはうれしすぎる。おお、勝負や勝負。決めたれ、決めたれ、男になれ!
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後半アディショナルタイム。男・マスチェラーノがアルゼンチンを救った。カイトからゴール前スナイデル、これを絶妙のヒールでロッベンへ。ロッベンディフェンダーを振りほどきつつ、怪盗のようにペナルティエリアに切り込んだ。やばい、最悪のパターンだ。

どっこい、男・マスチェラーノは振りほどかれてはいなかった。最高のタイミングで放ったロッベンのシュートを、最後右足をグイィッと伸ばしてクリアしたのだ。すごい。すごすぎる。

片やロッベンファンペルシ。片やメッシ、アグエロイグアイン。これら世界最高峰のアタッカーたちを互いに消し合うのだ。守り合いといえども緊張感が違う。すごい試合になった。
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試合はスコアレスでPK戦へ。アルゼンチンがメッシを中心に円陣を組む。男・マスチェラーノがGKのロメロに熱く語りかける。「世界中から脚光を浴びるチャンスだぞ」

オランダ一人目フラールを止めた。思わず大きくガッツポーズ。これはとてつもなく大きい。三人目スナイデル。おおーっ、止めた止めた!すごいぞ、ロメロ!
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獅子奮迅の熱い男・マスチェラーノ。「このチームの根本は謙虚さと犠牲の精神。自分も全力を尽くす義務があった」と、この試合を振り返った。

過去2回出場したW杯、いずれも準々決勝でドイツが立ちはだかった。三度目の正直を果たしてほしい。マスチェラーノはインタビューの最後にこう語った。

「相手に不足はない。サッカー人生のすべてを懸けたい」