首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

G7協調為替介入

「懐中電灯が必要なのに、もう東京ではどの店にもない。」友人のSOSを受けて、昼休みに新都心にあるヤマダ電機に出かけた。「電池も多めに買ってあげると喜ぶかもな。充電型の方がよいかな。」とか気楽に考えつつ自転車をこいだ。ところが店に入って驚いた。もう懐中電灯も電池もすべて売り切れ。店頭から一切消えている。ここは那覇である。東京から1500キロも離れている。そんな場所なのにこのような影響が出ている。日本は大変なことになっている。

今、テレビでは菅総理の記者会見が行われている。改めて思うのは、このような無様なリーダーを持ってしまった不幸である。気迫が全く感じられない。現場には正義感を持って働いている職員がいる。心ある気象・原発関係者、研究者は、果してどのような思いでこの質疑応答を聞いただろう。
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今日はよいニュースがあった。G7の円売り協調介入である。15日の日記で“日本の金融・資本市場の水準の高さ”を評価した。今日は各国政府・中央銀行の見識の高さ、判断の速さを心から称えたい。久しぶりに胸のすく、すばらしい介入だった。

ただでさえ、今回の地震後の円高・ドル安の動きはファンダメンタルズでは説明が難しかった。問題は17日早朝の動きである。取引が薄い時間帯を狙って明らかに投機の仕掛けとみられる円買いが一気に加速、過去最高の76円台を付けた。投機という取引、それ自体は決して悪ではない。円滑な市場取引のためには必要な、その意味で奨励されるべき行動である。常々そのように考えている僕も、17日朝の仕掛けは“悪質”だったと認めざるを得ない。寝床の中で76円台突入を知らせるiPhoneの速報ニュースを見た時の印象は、「やられた。。」というある種の敗北感だった。

取引の薄い時刻、大震災をうけて不安定な相場環境。地震後、週が明けて14日から16日の取引を綿密に分析した“知恵のある投機筋”(もしかしたらあの投資銀行?)が、満を持して一気にドル売り円買いを仕掛けたと見る。奴等の綿密な分析の中には、日本の個人FX投資家、いわゆる“ミセス・ワタナベ”の投資行動様式が織り込まれていたことだろう。ロスカットルール*1に従わざるを得ないことがあらかじめバレているため、このような不安定かつ価格が大きく動く可能性のある局面において、ミセス・ワタナベは極めて弱い立場にまわることになる。地震から3営業日目、今や取引の3割を占めるといわれるさすがのミセス・ワタナベも緊張がゆるんでいたのかもしれない。

そして17日早朝、その脆弱性が狙い撃ちされた。正直に言おう。奴等の仕掛けは周到に練りこまれた、実に理にかなったものであり、恐れ入ったという他ない。おそらく仕掛けた投資家は莫大な利益を得て、しかもそれをすでに確定させているだろう。マネービジネスとしては大成功である。世の中にはこんな頭のいい奴等がいるんだな*2

ミセス・ワタナベが狙い撃ちされた後、外為市場は一気に不安定になった。「保険金支払い準備のため、日本の保険会社が外貨建て資産を円資産に切り替えているのでは」「いや、海外の再保険会社が円の調達を急いでいるのでは」といった噂が駆け巡った。直前に“日本の金融・資本市場の水準の高さ”を評価したばかりだったのだが、昨日の為替市場は明らかに混乱しているように見えた。

……そんな中で聞いた今朝の協調介入のニュースである。苦しんでいる日本、混乱している円相場を落ち着かせよう、マネーゲームの場にしてはならない。そのような強い意志が感じられた。日銀の単独介入ではなく、10年ぶりのG7による協調介入。しかも日本の委託ではなく各国の直接介入。これを日本に対する心強い応援と感じたのは、おそらく僕だけではないだろう。

*1:評価損が一定の水準に達すると、強制的に損失を確定させるためにポジションを解消する取引が実行される、という取引業者との契約。

*2:しかし今回は奴等に脱帽はしない。あえて言っておきたい。今回の手口で儲けたカネを善行に使わなければ、地獄に堕ちるだろう。こんな災害に乗じて儲けたカネは、どうか震災復興に提供してもらいたい。カッコいいぞ。徳を積み、どうか来世で幸せに暮らしてくださいな(笑)。