首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

てびち

このところ、結構「てびち」を食べる。

毎週必ず1回、いや2、3回は食べているかもしれない。
念のため、てびちとは豚足を煮込んだ料理のことだ。沖縄ではメジャーな料理だ。居酒屋でも置いてあるにはあるが、僕のイメージはお昼ごはんだ。ガッツリいきたい時に定食で、あるいは沖縄そばに乗せて。ああ、もう考えるだけでよだれが出てきた。

足てびちwikipedia-豚足の項より)

  • 豚足は、日本料理ではあまり馴染みのない食材だが、沖縄では足てびち(単にてびち、てぃびちとも)と呼ばれ、煮付けやおでんの具、沖縄そばの具などとして日常的に消費されている。
  • てびちとは「手引き」の転訛とされ、煮付け料理を意味する琉球方言である。本来は豚足そのものを指す言葉ではないが、この種の料理に豚の足が多用されたためか、現在は沖縄でも一般に「てびち=豚足」として認識されている。

ホルモン好きを自認する僕にしても、本土で暮らしていたころは「豚足は好物」という感じではなかった。思い返してみても、豚足が実家の食卓に並んだことはない。一般的にいって「沖縄県、鹿児島県など以外の日本では、以前は酒場でつまみとして出される男性向けのやや特殊な食べ物(ゲテモノ)という認識(wikipedia)」なのだと思う。東京で食べた印象は残っていない。

本土で美味しかった記憶といえば、横浜駅前にある豚珍味の店「味珍(まいちん)」やナンバの空港バス乗り場近くの「かどや」ぐらいだな。豚足は汁を切った状態で皿にのって供される。味付けは軽い塩味。形はグロイほど原型をとどめている。ああ、これは豚さんの足だったのだなあ、と。それを酢、あるいは酢醤油(プラス練りがらし)をつけ、それを手でもってかぶりつく。なんとなく中華料理、特に台湾料理の流れを感じる料理。いま沖縄でハマっているてびちとは全然違う。
てびちは、汁も一緒に楽しむ煮込み料理だ。関西のおでんやポトフに近いかもしれない。ブラジルに行ったときによく食べた豚の煮込み料理(フェジョアーダ)にも共通のものを感じる。先の引用を続けよう。

  • 味付けは塩、砂糖、醤油程度の単純なもので、泡盛を加えて昆布のだしで煮込む。近隣他国にみられる同種の料理とは異なり、香辛料の類を用いることはない。 

そう、シンプルな料理なのだ。しかも味はとても上品。基本は昆布だしですよ。供された時は塩分も控えめで、客は好みに応じて卓上塩で調節する。煮込まれて余分な脂は落ちている。一見グロくてコテコテだけれど、実はその対極、究極の健康食であり、かつその繊細な味はグルメをうならせる。
シンプルだからこそ、素材の良さと下ごしらえの丁寧さがそのまま表れる。店の差がこれほど出る料理もないでしょう。雑な店のてびちを食べた観光客は本当にお気の毒さま。沖縄では家庭用に豚足がドーンと、しかも毛がついたまま(!)で普通に売られているけれど、僕には絶対に真似するのは無理だ。本当に美味しい店のはマジで違います。しかも腹一杯食べて600円とか700円ですよ。
まあ、いまさら僕がリキんで書くまでもないんですがね。とにかく美味しいてびちは本当に美味しいですわ。