首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

ノーベル経済学賞

今年のノーベル賞、昨夜は経済学賞の発表。毎年けっこう楽しみなのだ。

実際に論文を読んだことのある先生が受賞するとやっぱり嬉しいものだ。特に専門でなかった分野だったとしても、ノーベル賞を受賞するぐらいのビックネームなら常識として知っているべきもの。知らないと勉強不足を露呈することになる。どっちにしても「さてさて、今年はだれが取るんだろ」とワクワクしている。

で、今年の受賞者。うわ、もろファイナンス。いやー、いつもお世話になってます、あの頃はお世話になりました、のお三方でした~。

ノーベル経済学賞、米大教授3氏に 資産価格の分析を評価

CNN, 2013.10.15 Tue

  • スウェーデン王立科学アカデミーは14日、2013年のノーベル経済学賞シカゴ大学のEugene F. Fama、Lars Peter Hansen両教授、イェール大学のRobert J. Shiller教授の3氏に授与すると発表した。資産価格に関する実証的な分析が評価された。
  • 同アカデミーによると、3氏の研究は資産価格に関する理解の基礎を築いた。短期的な資産価格の予測は困難な一方、3~5年先といった比較的長期の価格は広い意味で予測が可能なことを示したという。研究の結果、株価指数連動型ファンドが生まれ、年金基金などの主要な運用先になっている。
  • シラー氏は1990年代にはインターネット関連株のバブルに警鐘を鳴らし、その後は不動産高騰に懸念を表明していたことで知られる。受賞の知らせを受け「信じられない。多くの人が私が受賞することを祈っていると言ってくれていたが、他にも受賞に値する人々が大勢いるのを知っていた」と語った。
  • 同氏は、経済学は人々の福祉を増進するために幅広く適用できると述べ、「金融が現代文明を押し上げた。人類に資するように金融がさらに発展していくのをみていきたい」と語った。

一般的に一番おなじみなのはファマかなぁ。証券アナリストの教科書では1丁目1番地に出てくるし。学部生レベルでも普通に知っているはず。実証するときには必ずGMMにはお世話になる。そう、あのGMMのハンセンです。そしてシラー。新聞やインターネットではシラー先生が最も知られているかも。

昔、シラー先生の研究室を訪ねたことがある。霞が関で働いていた時だから、もう10年以上前のことになる。NYのグランドセントラル駅から列車に乗り、ニューヘブンへ。イェールの経営学部に在籍していたある研究者との面会が目的だった。受け入れ教授だったのがシラー先生。まだ「根拠なき熱狂」が世に出る前だった。あのシラー先生が今やノーベル賞とは。。うん、いい思い出だな。

シラー先生の学部ホームページに行ってみた。最近の著作のリストがあった。2009年の"The new financial order: Risk in the 21st century”は必読だなぁ。え?これ、全文を無料でダウンロードできるのですって?うーん、すごい時代になったものだ。ご厚意に甘え、さっそく今日から読ませて頂きます。
あと、2012年に出たばかりの"Finance and the Good Society"もぜひ読んでみたい。前書きによれば、金融の定義を、単に金の操作やリスクのマネージメントではなく、社会の資産の管理ととらえることが必要なのだと。金融が社会のパラサイト的な存在ではなく、我々が共通で抱える問題を解決するための強力なツールであり、それが我々の幸福を増すことに貢献するために役にたっているのだと。

  • 彼は金融業界の人々―CEO、投資マネージャー、銀行員から保険屋、弁護士、監査人、そして金融当局に至るまで、が、どのようにこれらの資産を管理し、守り、増やしていけるかを説く。
  • その上で彼はいかに金融が社会に貢献してきたか-保険、住宅ローン、預金口座、年金等の発明などを通して-を説 明していく。そして我々は、金融上のクリエティビティのチャンネルを変えて、新しい道を模索するべきだと唱える。
  • そして最終的に、シラーはどのようにして社会がまた、金融のパワーをよりよいものに役立てていけるか、を、明らかにしていく。

おお、何とも希望を持たせて下さるじゃないですか、シラー先生。金融業界に完全に失望した僕だけど、ぜひ新品を購入して読ませてもらいます(笑)。

ただ悲しいかな、僕はもう金融業界の第一線を退いてしまったので、直接ここから得た知見を使うことはできないけれど。日本では珍しく結構いろいろな金融に関する経験をしてきたことは確かだし、きっと感じるところはあると思うのだが。