首里に住まう男

沖縄の古都、首里に移り住んだ関西人の表の顔

バックアップシステムの価値

沖縄本島先島諸島を結ぶNTTの通信回線に障害が起きたとのニュースが。

LCCの参入で航空運賃も格安になり、実感としてはめちゃくちゃ近くなったといわれる沖縄本島と先島の距離。しかし、結んでいるライフラインのひとつが断絶しただけで、先島の人たちの生活には大きな影響が出る。沖縄の広さと特殊性を実感する瞬間だ。

今はインターネットのおかげで、先島の地元新聞の報道内容を容易に知ることができる。八重山の状況を探してみた。

先島エリアで通信障害 郡内は8,500回線不通 -3時間余り市民混乱 NTT西日本-

八重山毎日新聞 2013/11/9


NTT西日本が、八重山と宮古の先島エリアで提供する「フレッツサービス」で8日午後、通信障害が発生。同日13時15分ごろから3時間余りにわたり、携帯電話やインターネット、光電話が不通となり、合計15,700回線(うち八重山8,500回線)に影響が出た。

携帯が全く通じなくなったとは!ドコモのユーザーさんはさぞお困りになったでしょう。沖縄ではauが一番有用とはよく聞くけれど。今回はauもソフトバンクも通じたらしい。こういう特定の1社だけのトラブル、今回だけならいいが何回も続くと悪評はボディブローのように効いてくるのだろうな。

NTTが先島側、沖縄本島側双方の伝送装置を取り換え、同日午後4時33分に、サービスが復旧した。この影響で、一般市民の利用のほか、一部銀行で、窓口とATMの機能が停止し、預金の出し入れができなくなるなど、市民生活、経済活動に大きな影響が出た

八重山毎日新聞によれば、影響は携帯電話やインターネットだけではなかったようだ。なんと週末繁忙の金曜日、一部銀行の窓口とATMの機能が停止してしまったとのこと。これはさぞや大変な混乱となったのではないか。宮古でも同じような状況だったのだろうか。

NTT回線障害 販売店に問い合わせ殺到/銀行ATMも一時停止


宮古島市で8日に発生したNTT回線障害。同回線を利用している一部の金融機関では窓口業務やATMでの取り引きが一時停止したり、携帯電話が利用できなくなるなど多くの市民が影響を受けた。


沖縄銀行宮古支店では午後1時30分ごろから、行内にある6台のATM機がすべて停止。このため、同行は銀行入り口に「お知らせとおわび」の張り紙をして来店する客に状況を説明するとともに、行員らが他の金融機関や店外の各種施設に設置された一部のATMでの利用を呼び掛けた。また、店外設置のATMには行員を配置して対応した。

やはり宮古でも一部金融機関の窓口業務やATM取引が停止したらしい。地元の人たちはどんな感想をもったのだろうか。宮古毎日新聞は次のように報じている。

この日は企業の給与支払や週末とも重なり、多くの市民らが銀行を訪れた。現金を引き出しに来た飲食業の男性(32)は「困るが、急いでいるわけではないので仕方がない。ケータイもつながらないので友人とも連絡ができない」と話した。


大型スーパー内に設置されているATMの前で順番待ちしていた会社員の男性(51)は、「回線の障害なら仕方がないのではないか」と割り切った表情だった。

おお、宮古の人たちは想像以上に寛容だ。なんと忍耐強いことか。

「困るが急いでいるわけではないので仕方がない」「回線の障害なら仕方がないのではないか」…迷惑を被っても“仕方がない”といって許してくださるお客様たち。沖縄の金融機関は恵まれている。大阪で同じ状況になったら、行員は即座に吊るしあげられるで(苦笑)

さらに宮古毎日新聞の記事は以下のように続いていた。

他の金融機関ではバックアップシステムの回線などで対応したため、特に影響は出なかったという。

なるほど、他の金融機関ではトラブルが発生しなかったということなのか。これは興味深い。

金融機関の勘定系システムは社会インフラそのものだ。確かに、NTTの回線がダウンしただけで、金融機関のシステムがそのまま連鎖的に落ちてしまうというほうが理解し難い。今回のシステムダウンはこの銀行のみに生じうる極めて特殊な事例なのかもしれない。

一般的に、金融機関の情報通信回線には少なくともひとつ、場合によっては複数のバックアップが用意されている。万が一の場合にはそれに切り替え、何事もなかったかのように業務に当たる。それが社会的存在としての金融機関が果たさなければならない当然の役目だ。コストがかかったとしても、いつ来るかわからないその時に備え、バックアップシステムを用意しておく。それが最低限のリスク管理というものだ。

金融機関の勘定系システムがダウン、確かに「仕方がない」こともある。しかし適切に手を打っておけば、避けることのできたケースも多い。金融庁をはじめとする金融当局は、ここをきちんと峻別して評価する。

沖縄の顧客や報道機関は温かくも厳しい姿勢で、金融機関の力量をしっかりと見極める必要があると思う。今回のトラブル、本島二紙が厳しく報道していないとしたらそれは怠慢である。ある種の馴れ合い、癒着があるのではないか。また利用者の側もユーザーとしての高い目線が求められよう。「仕方がない」と言っているばかりでは、いつまでたっても本土並みの金融サービスを享受することはできない。

バックアップシステムには大きな価値がある。金融機関は目先の収益よりも重要なものがあることを肝に銘じるべきだ。